トランプ前大統領が、新聞社を相手取った名誉毀損訴訟で完敗した。米フロリダ州の連邦地裁が訴えを棄却。元大統領が大手メディアに法廷で屈する異例の決着となった。

トランプ氏は2024年、2020年大統領選に関する報道で虚偽の情報を流布したとして、ダウ・ジョーンズを提訴していた。請求額は数十億ドル規模。だが裁判所は、報道内容が「公共の関心事に関する意見表明」であり、名誉毀損には当たらないと判断した。

言論の自由が勝った

判決の核心は「表現の自由の保護」にある。米国では公人に対する報道は広く保護される。名誉毀損を認めさせるには、報道機関が「虚偽と知りながら」または「真実かどうかを無謀に無視して」報じたことを原告が証明しなければならない。このハードルは極めて高い。

トランプ氏側は具体的な悪意の証拠を示せなかった。裁判官は「政治的な論評や社説は、たとえ当事者に不快であっても、憲法で保護される」と明言した。

米国ほど大規模ではないが、日本でも政治家がメディアを訴える例はある。元首相が週刊誌を相手に数百万円の賠償を求めた事案と比べると、今回の請求額は桁違いだ。

権力とメディアの緊張関係

トランプ氏は在任中から「フェイクニュース」という言葉を武器に、主要メディアへの攻撃を繰り返してきた。CNN やニューヨーク・タイムズなど複数の報道機関に対しても訴訟を起こしている。

だが法廷では苦戦が続く。報道の自由を重んじる米国の司法制度は、公人に対する批判報道に寛容だ。政治権力がメディアを萎縮させることへの警戒が、判例に色濃く反映されている。

今回の判決は、2024年の大統領選を前にしたタイミングで下された。メディア各社は「報道の独立性が守られた」と受け止めている。トランプ氏は控訴する姿勢を示しているが、上級審で覆る可能性は低いとみられている。