「もう歳だから」は脳科学的に間違いだった。80歳を過ぎても50代なみの認知機能を維持する人々がいる。彼らは「スーパーエイジャー」と呼ばれ、集中力も記憶力も判断力も衰えていない。
脳内科医の加藤俊徳氏によれば、脳の最盛期は40代後半から50代。経験が花開き、気力も体力も充実する円熟期だ。ただし、ここがピークとは限らない。50代の脳力をそのまま70代、80代まで維持する人がいるのだ。
ストレスが脳を壊すメカニズム
スーパーエイジャーと普通の人、認知症になる人。この3タイプの認知機能は、年齢とともにまったく違うカーブを描く。普通の人は60代からゆるやかに下降する。認知症になる人は急降下。だがスーパーエイジャーの線は、ほぼ水平のままだ。
なぜ差がつくのか。答えは「ストレス」にあった。
強いストレスを受けると、体はコルチゾールというホルモンを分泌する。血圧を上げ、体を緊張させてストレスに対抗しようとする防御反応だ。問題は、このコルチゾールが長期間大量に出続けると、記憶を司る海馬の神経細胞を傷つけ、萎縮させてしまうこと。海馬の萎縮は認知症の初期症状そのものだ。
つまりスーパーエイジャーは、ストレスのない楽園に住んでいるわけではない。ストレス処理の達人なのだ。
性格は「脳の使い方のクセ」
「明るい性格じゃないから無理」と諦めるのは早い。加藤氏は断言する。
性格はいくつになっても変えられる。性格とは「脳の使い方のクセ」だからだ。
前向きな性格になる最も簡単な方法は「光」と「運動」で脳にスイッチを入れることだという。
太陽の光が網膜から入ると、セロトニンが分泌される。別名「幸せホルモン」。ストレスを緩和し、疲労を解消する。不足すると意欲が低下し、不安や不眠、うつ症状につながる。加藤氏はこの状態を「光貯金がある」「光負債を抱えている」と表現する。
運動はドーパミンを分泌させる。興奮や集中時に出るこのホルモンは、意欲と元気の源だ。楽しい、嬉しいという感情が生まれ、ポジティブで活動的な気分になる。毎日その気分が続けば、それはもう「性格」と呼べる。
朝日を浴びてウォーキング
加藤氏がすすめるのは「朝日を浴びながらのウォーキング」だ。セロトニンの幸福感とドーパミンの高揚感を同時に得られる。
心配ごとや不安がよぎったとき、あわてて解決策を考えるのではなく体を動かす。筋肉の反応、息づかい、汗ばむ皮膚。そこに意識を向ければ、余計なことを考える余裕はなくなる。運動でひと汗かいた後は心が軽くなり、冷静に対処できるようになる。
お金の貯金だけが老後の備えではない。「光貯金」と「運動貯金」が、80歳でも衰えない脳をつくる。明日の朝、10分早く起きて外に出てみる。それだけで未来は変わり始める。
