東南アジアのEC市場が、たった3社に支配された。

TikTok Shop、Shopee、Lazada。この3つで市場シェア99%。現地発のEC企業は次々と物販から撤退している。インドネシアのBukalapak、ベトナムのSendo。かつて地元の希望だったプレイヤーが、巨人たちの前に白旗を上げた。

TikTok Shopの異常な成長速度

数字が物語っている。TikTok Shopの2025年売上は456億ドル(約7兆円)。前年の226億ドルからきっちり倍増した。わずか1年で売上を2倍にするEC企業など、普通は存在しない。

首位のShopeeは832億ドルで独走。3位のLazadaは180億ドルでほぼ横ばい。つまりTikTok Shopだけが異次元のスピードで伸びている。

「大手プレイヤーが支配力を固め、互いに競争している。小規模なプラットフォームや物流企業は市場から退出しつつある」

シンガポールのコンサルティング会社Momentum WorksのCEO、ジャンガン・リー氏はそう語った。

AIと動画が小規模企業を駆逐する

なぜ3社だけが勝ち残れるのか。答えはAIを活用した動画コンテンツにある。

TikTok Shopの急成長とShopeeの動画投資が、2025年に推定497億ドルの売上を生んだ。東南アジアEC市場全体(1576億ドル)の約3分の1が、動画経由で売れている計算だ。

AIは商品紹介動画の制作時間を劇的に短縮する。撮影スタジオも不要。人件費も機材費もかからない。資金力のある大手は、この仕組みをフル活用して消費者を囲い込む。中小企業には真似できない戦い方だ。

さらに大手3社は、補助金・クーポン・割引を自社負担で大量にばらまく。物流網も押さえている。トラフィックもツールもユーザー体験も、すべてプラットフォーム側が握っている。

国別で見ると、タイのEC売上成長率は前年比51.8%、マレーシアは47.6%。ASEAN全体の22.8%を大きく上回る。市場は急拡大しているが、その果実を手にするのは3社だけだ。

プラットフォーム経済の勝者総取り。東南アジアで起きていることは、世界中のEC市場が向かう未来かもしれない。日本でもTikTokのEC機能が本格化すれば、楽天やAmazonとの勢力図が変わる可能性がある。